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映画『劇場版 SHIROBAKO』ネタバレ感想・考察|仕事の傷は仕事で癒やす

TVアニメ『SHIROBAKO』は、アニメ制作の現場で起こる「あるある」を、時に辛辣に時にユーモアたっぷりに描き人気を得ました。

では本作『劇場版 SHIROBAKO』ではどのようなことを描いていたのか。本作も作品のテイストは同じですが、主人公たちの悩みの質が変わっています。

特に私が『劇場版 SHIROBAKO』を視聴して感じたテーマは、仕事に迷った時の対処法です。それを2つの視点に分解して紹介します。

次に『劇場版 SHIROBAKO』を見ていて「ん?」と思った点、とくに劇中劇のミュージカルの意味についても後半で解説していきます。

最期に『劇場版 SHIROBAKO』の内容を振り返りたい人向けに(もしくは内容を知りたい人向けに)あらすじを書きました。

作品のラストについてネタバレしているので、あらすじ以降は必要に応じて読んでみて下さい。

映画『SHIROBAKO』ネタバレ感想・考察|仕事で迷った時の対処法

TVアニメの『SHIROBAKO』には3つのテーマがありました。一つは「仕事で成長していくこと」。もう一つは「組織で仕事をすること」。そして最期に『人生の目標』。

この3つのテーマが重なり合い、TVアニメ『SHIROBAKO』は普遍的な(アニメ業界の人以外にも示唆がある)物語になっていました。

仕事に迷ったら原体験を思い出せ

©2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

劇場版でのあおいたちの悩みの質は、よりドロドロと複雑なものになっています。まずそこで示された一つの解決策は「仕事に迷ったら原体験を思い出せ」という考え方です。

例えば一つ象徴的なシーンがあります。それは上山高校アニメーション同好会の5人が、アニメーターの杉江に誘われて参加した子供アニメ教室のシーンです。

この教室で藤堂美沙は「一緒に作ったら楽しいよ」とぐずる子供をあやします。その直後、美沙は自分の言葉にハッとします。

会社で後輩を指導する立場になった美沙は「より良い成果物を目指す」あまり、人間関係をギクシャクさせていました。

しかし、美沙がそもそもアニメの仕事に関わりたいと思ったのは、友人と部活でアニメを作ったことが楽しかったからです。

美沙はアニメの作り方を教える過程を通して、美沙自身が忘れていた大切な原体験を思い出します。それをキッカケに美沙は仕事の方法を変えていきます。

仕事で負った傷は仕事でしか癒せない

©2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

あおいは物語の序盤、死んだ魚のような目をしています。大好きなアニメ制作に関わってはいるはずなのに、気分が優れないのはなぜか。

あるオペラの歌詞に「汝(なんじ)を傷つけた槍だけが汝(なんじ)の傷を癒す」という言葉があります。その意味は「あなたが負った心の傷は、あなたに傷を与えたものでしか癒せない」という意味です。

概して、仕事でも同じことがいえます。あおいの目が死んでいた理由は、タイマス(ある事情で制作中止になったアニメ)と同じレベルで本気になれる仕事ができなかったからです。

監督の木下誠一もタイマス事件のあとは自室で不摂生な生活を送っていますが、劇場版アニメを本気で作りだしてから息を吹き返します。作画監督の遠藤も同じです。

このように『劇場版 SHIROBAKO』は、傷ついた職業人たちに対してまっすぐな表現で「仕事で負った心の傷は、仕事を通じて癒やされる」ということを示している作品と言えます。

そのためなら、みっともなくジタバタしたって良いじゃないか、そんなエールを送っているようにも感じます。

映画『SHIROBAKO』ネタバレ解説|劇中のミュージカルの意味

本作にはミュージカル形式のシーンがあります。これはTVアニメ版では無かった演出の一つです。このミュージカル部分に違和感を覚えた人も多いのではと思います。

どうして『劇場版 SHIROBAKO』にはミュージカル形式が採用されたのか?恐らくそれは、演劇におけるオペラとミュージカルの違いを知ると答えが見えてきます。

オペラとは歌や音楽で構成された演劇です。だからオペラの台本はすべて譜面になっています。よってオペラ=歌といっても過言ではありません。

一方、ミュージカルの場合は物語がまずあります。その物語のなかで、特に強調したい登場人物の感情の変化を示すときにだけ歌が用いられます。

件のミュージカルシーンは、もちろん劇場版アニメ的な演出意図が無かったとは言い切れませんが、落ち込んでいたあおいの心の変化を劇的に表すため採用されたと考えるとしっくりきます。

そのくらいあおいの落ち込みが大きかったこと、その落ち込みを限られた時間内で効果的に回収すること、そのためにミュージカル形式が採用されたというわけです。

映画『SHIROBAKO』あらすじ

死んだ目をした宮森あおい

2019年4月、宮森あおいは「第三飛行少女隊2期」の放送をなんとも言えない切ない気持ちで見つめていた。

かつて「三女1期」の制作時、オンエアーを今か今かと待っていた武蔵野アニメーションの会議室は、いまはとても閑散としている。

4年前「三女」の成功で波に乗っていた武蔵野アニメーションは、木下誠一オリジナルアニメ「タイムヒポポタマス(通称:タイマス)」の制作に取りかかっていた。

制作はかつてないほど順調に進んだが、ついに「タイマス」が日の目を見ることは無かった。スポンサー側で制作中止が決定したのである。

先行して制作を進めていたムサニは制作にかかった資金を回収できず、経営が悪化。人を減らすしか生き残っていく方法が無く、結果アニメーションスタジオとして負の悪循環に陥っていった。

それから4年、あおいは死んだ目で仕事をしていた。かつて仕事に迷ったとき「アニメを作る人とアニメが好き」という人生の目標を見出したあおい。しかし今その面影はない。

宮森あおい復活!原点回帰

そんな時、メーカープロデューサーの葛城から劇場版アニメを作らないか?と連絡が入る。葛城が制作を委託していた会社が公開1年前にして何も作っていないことが判明したのだ。

言うなれば、その依頼は“敗戦処理”だった。実質、公開まで残り8ヶ月しかない中でアニメを制作しなければならず、今のムサニでの成功は極めてむずかしいと思われた。

絵麻、みどり、美沙、しずかたちと久しぶりに飲んだ帰り道、あおいは考えていた。どうして自分がアニメの仕事に関わりたいと思ったのかを。

その想いはあおいの想像の中で「アニメーションを作りましょう」という歌と踊りとなってあおい自身を後押しした。あおいの原体験があおい自身を救ったのだ。

そうして、あおいは劇場版アニメに取り組む決意をする。

完全オリジナルアニメ「空中強襲揚陸艦SIVA」制作開始

あおいは「空中強襲揚陸艦SIVA」の監督に、かつて「三女」を共に制作した木下誠一を推薦する。木下は「タイマス」制作中止以降、自堕落な生活を送っていた。

「もう二度と失敗したくない」木下はあおいの要請を断ってしまう。しかしかつての盟友・本田(元制作、現在パティシエ)の説得もあり、木下はもう一度チャレンジすることを決心する。

あおいはエフェクト・メカの作画監督に遠藤亮介を起用しようとしていた。だが遠藤もまた、木下と同じく「タイマス」の呪いを引きずっていた。

アニメーターの先輩である瀬川、かつて一緒に仕事をした3Dの下柳、遠藤の妻の何気ない言葉から背中を押された遠藤は「空中強襲揚陸艦SIVA」への参加を決める。

第1の試練「げ〜ぺ〜う〜」の汚いやり方

「空中強襲揚陸艦SIVA」の制作が順調であることを聞きつけた「げ〜ぺ〜う〜」の社長から葛城に連絡が入る。制作を放棄したはずの「げ〜ぺ〜う〜」が、今になって元請けの権利を主張してきたのだ。

「げ〜ぺ〜う〜」の汚いやり口に一度は心を折られたあおいだったが、制作をしてきた仲間たちの表情が頭をよぎる。

プロデューサーの仕事とは何か?それは「なんとしてもアニメを上映させること。観客により良いアニメを届けること」。

あおいは「げ〜ぺ〜う〜」に乗り込み、法的な面での正当性を主張。少し強引な手も使い「げ〜ぺ〜う〜」社長を説得することに成功した。

第2の試練「SIVA」ラストシーン再編集

「げ〜ぺ〜う〜」の問題が解決し、作品はなんとか上映3週間前に完成した。しかし完成したラストシーンにカタルシスが足りない。

上映の3週間前に作品を修正するというのは、作品が上映できなくなるリスクも含んでいる。賛否両論ある中、ムサニはラストシーンの修正にとりかかる。

それから3週間後。上山高校アニメーション同好会の5人は、ひょうたん屋のドーナツを手に「空中強襲揚陸艦SIVA」の上映を待っていた。映画は無事完成したのである。

修正したラストシーンには、もがきながら、ジタバタしながら前に進む主人公たちが、ドラマティックに描かれていた。それはまるであおいたち5人を象徴しているようだった。

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