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映画『花束みたいな恋をした』ネタバレ有りの感想|花束は枯れても

(C)「花束みたいな恋をした」製作委員会

皆さん、こんにちは。
当サイト、管理人のケイです。

今回は2021年1月29日に公開された映画『花束みたいな恋をした』について、ネタバレありで感想を語っていこうと思います。

花束みたいな恋をした

本作は脚本家として有名な坂元裕二が手掛けるオリジナルラブストーリー映画。坂元氏が映画という媒体でラブストーリーを手掛けたのは今作が初めてです。

とはいえ、坂本氏のこれまでの作品を考えると、単純なラブストーリーが展開されるとは思えず、内心ドキドキしながら映画館に足を運びました。

あらすじ|とある恋愛の始まりと終わりを描く

2020年の東京を舞台に、井の頭線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った山根麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。

どこにでもいる現代の大学生の21歳から26歳までの恋愛の終わりから始まりを描く。

ケイ

主演は菅田将暉と有村架純。2人が共演するのは、映画『何者』以来4年ぶりですね。

スタッフ|ドラマ『カルテット』でも有名な坂元裕二が監督

坂本はテレビドラマ『カルテット』『東京ラブストーリー』『Mother』などで知られる脚本家。彼は数々の作品で、名言を残してきた。

ありふれた日常の中で放たれた言葉、ある日の一場面と思われる行動、そういった日々のたわいもない出来事がのちに伏線として回収される事も多い坂元作品。

本作品でも、冒頭でイヤホンの右と左で一つの曲を聞く2人が出現するが、これも結末に向けてのメッセージとなっているので、是非注目してほしい。

(C)「花束みたいな恋をした」製作委員会

坂本氏の自然な言い回しは自分のライフステージの変化に伴いヒットする言葉が代わり、何度もドラマを見直したくなる。

人に見られたくないようなこそばがゆい状況を何気ない日常と混ぜ合わせて描かれているのが見る人を惹きつける。

ちなみに私は、東京ラブストーリーのリカがカンチに言った「人が人を好きになった瞬間ってずっとずっと残っていくものだよ。」というセリフが好きだ。

(C)「東京ラブストーリー」フジテレビ

坂本氏の作品は各話ごとに名ゼリフが誕生しみる人の心にヒットする。

本作品が秋から不動の一位を獲得し、異例の大ヒットを記録していた鬼滅の刃を抜いて現在(2021.02.08現在 映画.com調べ)2週連続一位の座に君臨したのも納得である。

今回の坂元作品も期待を裏切らなかった。

大学生時代から同棲するまでの、いわゆる恋愛絶頂期を目にしても顔をそむけることなく鑑賞できたのは誰の日常にも潜んでいそうなエピソードが織り交ぜられていたからだろう。

(C)「花束みたいな恋をした」製作委員会

シンプルに菅田将暉と有村架純のラブラブな姿がかわいい。物語は終始、主人公2人の日記のような語りかけで進んでいく。

興味深いのは、その土台となる「日記」をよりリアルなものにするため、坂元氏は実在する人物を徹底的に観察したという。

坂本曰く「あまりよく知らない人のインスタと、友だちの友だちに関する又聞き、ほぼその2名。」

その観察をもとに5年間の固有名詞を徹底的に洗い出し、詳細な年表を作成して脚本に反映した、とインタビューで話している。

結果的に、この映画には、これまでの坂元作品とは大きく変わって、大量の固有名詞が作中に登場したのだった。

感想1|二人がお互いに惹かれ合っていく部分は見どころ

「気の合う友達って思ってるのかな?」「話が合うってだけなのかな?」

(C)「花束みたいな恋をした」製作委員会

お互いの類似点を見つけながら惹かれていく2人。ゆえに互いが恋愛対象なのか思い悩む。

偶然出会った2人が急激に惹かれあったのは、カルチャーの世界に共通点が多かったからだろう。

2人が初めてのカラオケで歌ったきのこ帝国の『クロノスタシス』、Awesome City Clubの『Lesson』、今村夏子の『ピクニック』などはその象徴だ。

その他にも滝口悠生の『茄子の輝き』、野田サトルの『ゴールデンカムイ』、市川春子の『宝石の国』など、サブカル好きにはたまらない作品が作中にはたくさん登場する。

作品というフィルターを通して、相手のセンスや性格までも自分に似たものを感じ、惹かれあう二人。

同じ趣味が見つかるほどに、相手との距離がどんどん近くなっていく。そんな経験をみな一度はしたことがあるはずだ。

年代の変化を伝える固有名詞を使うことで、実際の私たちの過去を振り返る時間軸と一致する演出も、気持ちを高まらせてくれる。

先に挙げた固有名詞を通しての2人の会話が、その時々の2人の関係性を物語る指標になっているのも見所なので、ぜひチェックしてほしい。

物語の前半はお互いを分かりやすく大切にする主人公二人の物語が展開されているのでとにかく恋をしたくなる。

最近枯れてきている人は是非前半部分でエネルギーチャージをしてほしい。

感想2|タイトル『花束みたいな恋をした』の意味とは

(C)「花束みたいな恋をした」製作委員会

就職が決まり、社会の荒波にのまれていく麦と、自分のやりたかった夢を追いかける絹。

2人を結びつけていたはずのカルチャーが、離れていく2人の心を表す演出になっているのは皮肉だ。

本作品の最大の魅力は、後半の別れに向かうシーンにあると言っても過言ではない。

むしろこのために前半のラブラブなシーンがピックアップされていたのだろう。

現状維持のためにしたくない仕事に邁進する麦(菅田将暉)。最低限のお金があればそれでよく、もっとお互いのカルチャーを共有したい絹(有村架純)。

2人はいつしか相手のことを理解しようとしなくなり、ついにはケンカさえなくなってしまう。その過程が絶妙にリアルで、まるで彼らの友人のような目線で鑑賞していた。

2人が共通の友人の結婚式に参列し、それぞれの参列席で友人に別れることを宣言するシーンがある。

結婚式の帰り道、2人は行きつけのファミレスで話し合い、最後にお互い涙し別れることを決めた。

もっと早くにどちらかお互いのそのままの気持ちをぶつけ合えていたら。

もっと相手のことを考えていたら。もっと2人の時間があったら。

あの時気になった言動の答え合わせをしていたら。

最後に気持ちが溢れて泣いている絹(有村架純)を見て、感じたことのあるような気持ちを思い出した人も多いはずだ。

実際映画館では泣いている人が多かった。

幾多ある後悔を並べても、ふたりの日々は返ってこない。

別れ際のギリギリな2人を前に、どうにもならない話し合いをした若かりし頃を思い出した。

別れを意識し始めたとたんに、別れ話へのカウントダウンが始まるのだ。

そして一度離れた心は二度と戻らない。

私はここに、本タイトルでもある花束が一度枯れると元には戻らないというメッセージを感じる。

「イヤホンは右と左があって、それぞれが別の音楽を奏でている。左右を分けて聞いたら、それは別の曲を聞いているのと同じだよ。」

冒頭、2人は一つのイヤホンで全く別の曲を聞いていたということだ。

同じ方向を向いて歩いていると思っていた2人は実は別々の方向を向いて歩いていたのだ。

最初のイヤホンの解説シーンは、おそらく2人のこんな結末を予期していたのだろう。

坂元氏の見事な伏線回収に圧倒された。

また、最終的に別れを選んだ彼らの現実とは裏腹に、なぜか明るい未来を感じて心が晴れた。

それは彼らが再会したときに、お互いを思い合った過去を受け止め、愛おしい5年間の軌跡に微笑んでいたからかもしれない。

学生時代に見ていたら、ただカップルの気持ち離れ別れていく物語に思えただろう。

大人になって見るからこそ、輝いていた頃の思い出の数々を持って成長していく切なさと美しさが心にしみた。

まとめ|たとえ一瞬の出来事であったとしても

(C)「花束みたいな恋をした」製作委員会

「花束みたいな恋をした」は男女の恋愛の過程が描かれている。

渦中にいる2人はその時々を生きていて知らず知らずのうちにすれ違っていくのだが、客観的にみる私たちの目にはそれが愛おしく切ない。

会いたい人に会えない今だからこそ、好きな人と触れ合い分かち合う尊さを実感する。

別れても、この人に出会ったという事実が次に出会う人を大切にするための道標になる気がする。

作中に描かれた特別ではない時間の美しさと儚さは、この題名とリンクする。

主演の有村架純が花束みたいな恋をしたの題名の意味を自己解釈してくださいと言われた時

「花束というワードから、“瞬発的なときめき”を連想しました。もちろん永遠ではないし、永遠なものってないかもしれないけど、一瞬のときめきがあれば人生楽しめるな、って。」

と答えている。

大地に根付く花のように、ずっと長く咲き続けるものでなくても、誰かにあげたくなるような、飾って眺めたくなるような魅力が花束にはある。

たとえ恋愛という花束が、人生という長い道のりの中で、一瞬の出来事であったとしても、その価値が薄れることはないのだ。

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