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ネタバレ解説『攻殻機動隊 SAC_2045』前半戦の理解を助ける6つの解説

「攻殻機動隊 SAC_2045を12話まで見たけど、なんだかモヤモヤする」

「サスティナブル・ウォーとか、レイドってどういう意味?」

「シマムラタカシの話がよく分からなかった…」

この記事は、そんな疑問を持った人に向けて書きました。

こんにちは。
当サイト『アニメ考察.com』管理人のケイです。

今回はNetflixにて4/23から世界同時配信が始まった『攻殻機動隊 SAC_2045』のシーズン1(1話〜12話)についての解説をネタバレありでお送りしていこうと思います。

『攻殻機動隊 SAC_2045』は過去3作品の『攻殻機動隊 SAC』の登場人物や背景はそのままに、前作『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』から11年後となる2045年のエピソードが描かれます。

攻殻機動隊 SACシリーズといえば、多くのアニメファンに人気のシリーズですが、物語が難解なのも特徴です。

『攻殻機動隊 SAC_2045』では、過去3作品よりも抽象的な話はおさえられ、より高いエンターテイメント性を目指しているものの、それでもまだ言葉の理解に苦慮する部分もあると思います。

今回はシーズン1の全12話を観て「少しわかりにくかったかな…?」と感じた部分を抽出して解説をしていきたいと思います。

皆さんが『攻殻機動隊 SAC_2045』を視聴したあとの理解の助けになれば幸いです。
それではまいります。

サスティナブル・ウォーの意味とは

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

サスティナブル・ウォーの説明で参考になるのは6話でのジョン・スミスの発言です。
もともとサスティナブル・ウォーとは、世界経済を持続可能にするために始まった産業としての戦争でした。

スミスはその時のサスティナブル・ウォーを「コントロールされた経済行為」と言っています。
1話の冒頭の情報を整理してみましょう。

2042年に起こったこと
  • Great4(米帝、中国、ロシア、欧州)がお互いがウィンウィンになる持続可能性を模索
  • 米帝が人工知能「コード1A84」を使って“産業としての戦争”を開始する
  • しかし各国は自国の利益を追求する方向に向かう

この流れからサスティナブル・ウォーは、米帝の作った人工知能「コード1A84」によって始まったことがわかります。

2044年に起こったこと
  • 全世界同時デフォルトが発生し金融機関が取引停止
  • 紙幣が紙くずになって、仮想通貨や電子マネーもネット上から消失
  • “産業としての戦争”は激化し、先進国でも暴動やテロ、独立運動、内戦が始まる

これは私の想像ですが、初期のサスティナブル・ウォーは、生身の人間の関与は最小限にとどめられており、人工知能によるサイバー戦、もしくはロボット同士が戦うものだったのでしょう。

本来のサスティナブル・ウォーは、大国同士が兵器を消費しあい、経済を回すことだけを目的にした、戦争ごっこだったはずなのです。

しかしこの状況を変えたのが、2044年の全世界同時デフォルトです。

全世界同時デフォルトは公にはG4の政策の失敗とされていますが、実際にはポスト・ヒューマンが引き起こしたものだと6話で判明します。

全世界同時デフォルトによって、先進国で暴動やテロ、独立運動、内戦が始まりました。
サスティナブル・ウォーが民間人に実害をもたらす戦争に変化したのは、この後です。

まとめると、サスティナブル・ウォーとは、もともとは大国同士が兵器やテクノロジーを消費しあい、経済を回す戦争ごっこのことを指していた。

しかしポスト・ヒューマンが起こした全世界同時デフォルトのせいで、世界中で内戦や紛争が発生した。

その後、サスティナブル・ウォーは世界中で起こっている既存の社会構造を破壊する活動全般を指す言葉になった、という流れで理解するとサスティナブル・ウォーの意味するところも理解しやすいように思います。

サスティナぶってるの意味とは

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

ついでに「サスティナぶってる」についてもモヤモヤを解消しておきましょう。
バトーが何度か口にした「サスティナぶってる」の意味は、恐らく「調子のってる」あたりが妥当かと思います。

バトーは1話でレイドに参加しようとする若者に対してこの言葉を口にしています。
レイドに参加しようとしている若者たちは既存の社会構造の変革などと高尚なことを言っていますが、基本的には憂さ晴らしをしたいだけ。

そのような身勝手で享楽的なレイディストたちを揶揄して「サスティナぶってる」とバトーは言ってるわけです。

また1話の後半では法外な値段でフードを売ろうとする売店の女主人に対しても「ずいぶんとサスティナぶってるじゃねぇか」と言っています。

相手の足元を見て値段をふっかけてきていることに対して(この時の3個1000ドルは実はまだそこそこサスティナぶってるだけなのですが)皮肉交じりに「サスティナぶってるなぁ=調子のってるなぁ」と言ってるわけです。

レイドやレイディストの意味とは

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

『攻殻機動隊 SAC_2045』の中では何度もレイド(Raid)という言葉が登場します。
英語でRaidとは「(相手に打撃を与えるための)不意の襲撃、(略奪を目的とする)侵入」のことを意味し、レイディスト(Raidist)は「収奪者」という意味になります。
本作のなかで繰り返されるレイドはテロ、レイディストはテロリストと置き換えれば理解が早いでしょう。

ちなみにレイディストらは何に怒っているのかというと、体制側(政府や大企業や富裕層)に怒っています。
というと義憤にかられているように感じますが、その怒りも実は建前です。
大半のレイディストやノマドたちは、憂さ晴らしやその日暮らしのために略奪行為を行っています。
物語の序盤に登場する元学生のレイディストたちの言葉がどれも軽く、薄っぺらいのはそのためです。
バトーはそれを全部分かっているので、彼らを「パーリーピーポー」とイジってるわけです。

ただ真の怒りをその心に秘め、行動しているレイディストもいると思われます。
その代表がポスト・ヒューマンであり、彼らは体制側が己の利益を拡大するためばかりにリソースを使うことに怒っています。

NSAやデルタの意味とは

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

ジョン・スミスが在籍しているNSAとは、国家安全保障局のことで、実在するアメリカの機関です。

その規模はFortune500の上位10%に選出される企業と同レベルの規模らしく、雇用者数は約3万人いるとされています。
3万人の従業員数は日立製作所の従業員数とほぼ同じだから驚きです。

そしてスミスの周りにいた「デルタ」とは、デルタフォース(Delta Force)のことでしょう。
デルタフォースとはアメリカ陸軍の第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊の通称で、主に対テロ作戦を遂行する特殊部隊です。

ちなみに細かい米軍ネタで言うと、5話で荒牧がパトリックヒュージ邸に到着した時に「コールサイン(暗号通信)はマリーンワンです!」とデルタ隊員がスミスに伝えるシーンがあります。

マリーンワンとはアメリカ大統領がアメリカ海兵隊機に乗っているときに出される信号のことです。
恐らく時間が無いと踏んだ荒牧が大統領の書簡を大統領同等の扱いとみなして信号を出させたのでしょう。

ジョン・スミスが冗談な理由

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

初めてスミスに会ったトグサが「ジョン・スミス」という名前に反応していましたが、ジョン・スミスという名前は、日本語でいうところの「山田太郎」のような名前です。

明らかに偽名と分かるような名前を堂々と言うものだから「ふざけるな」と言いたかったのでしょう。

またジョン・スミスをみてとっさに思いだしたのは映画『マトリックス』に登場するエージェント・スミスです。

TM&© Warner Bros. Entertainment Inc.(『マトリックス』のスミス)

映画『マトリックス』に出てくるエージェント・スミスと、『攻殻機動隊 SAC_2045』に登場したジョン・スミスが、非常によく似ているんですよね。

「そんなのただの偶然だろ…」

確かにこれはただの偶然かもしれません。

ただ『マトリックス』を作ったウォシャウスキー姉妹は、『マトリックス』を作る以前に攻殻機動隊から多大なインスピレーションを受けたと語っています。

なので『攻殻機動隊 SAC_2045』のスタッフが何かしら意図をもって、ジョン・スミスをデザインしたとしてもおかしくは無さそうです。

シマムラタカシと空挺部隊の謎

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

11話はとても奇妙な回です。
その理由は、物語の進行にあたって、シマムラタカシの妄想と現実が折り重なっているからだと思われます。

この奇妙さを理解する鍵になりそうなのが、11話のタイトル「EDGELORD(エッジロード)」です。
Edgelordとは「厨ニ病(ちゅうにびょう)の王」という意味で、英語圏でしばしば使われるネットスラングです。

厨ニ病(ちゅうにびょう)とは?
厨二病とは、いかにも思春期らしいと感じさせる言動を生じさせる要因、またそういう言動をする人を揶揄していう俗語。
典型的には、不自然に大人びた振る舞いをしたり、過剰に斜に構えた態度をとったり、自分を常人とは違う特別な存在だと考えたりするような言動について用いることが多い。
※実用日本語表現辞典より引用

©士郎正宗・Production I.G:講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

世界大戦が始まり、空挺部隊が空からやってきて自分たちを救いだしてくれるというのは、おそらくシマムラタカシの妄想です。

現実と非現実の区別がつかなくなっているシマムラタカシを指して「Edgelord」と言っているのであれば11話の奇妙な進行も納得ができます。

物語のストーリーラインを考えると、現実で起こったことは次の通りでしょう。

現実に起こったこと
  • 幼いシマムラタカシが京都でユズや空挺さんと出会ったこと
  • ユズが殺人事件に巻き込まれて死亡したこと
  • 数学教師が女子生徒に対して性的搾取を行っていたこと
  • シマムラタカシがシンクポルを開発したこと
  • 数学教師がシンクポルで電脳を焼かれたこと

一方で、シマムラタカシが妄想した内容が次の通りだと思われます。

シマムラタカシの妄想
  • 世界大戦が始まり空挺部隊が学校へ来ること
  • 空挺部隊の銃撃から同級生のカナミを守ったこと
  • 空挺部隊に撃たれて自らが命を落とすこと
  • シマムラタカシに語りかけるユズ

11話で空挺部隊に撃たれたシマムラタカシは「空挺部隊はタカシ君自身なんだよ」と、ユズに諭されています。

ユズも空挺部隊もシマムラタカシが空想していることだと考えれば、11話の進行が理解できるように思います。

以上で、12話までに気になった言葉や設定の解説を終わります。
純粋な感想については、また下で紹介している記事に書いていますので、もしよければ読んでみて下さい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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